育休に関する新制度が同時に始まり、次のような疑問をよく耳にします。

産後パパ育休を取らないと損?

育休で手取りの100%が支給されると聞いたけど本当?
実は、「給付金を満額もらうためには、産後パパ育休が必須」という考えは間違いです。
育休には多くの支援制度や給付金がありますが、その制度設計は複雑で、誤解したまま損をしている方も少なくありません。
この記事では、活用することで給付金を手取り100%にできる新制度「出生後休業給付金」に関する誤解されやすいポイントを、FP資格保有者『まき』がわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、複雑に見える制度の要点をスッキリ整理し、「損しない選択」ができるようになります。
育休と給付金の用語をかんたん解説
育児休業にまつわる制度は複雑で、似たような名称が多く「どれが自分に関係あるの?」と戸惑う声をよく聞きます。
ここでは、最低限知っておくとよい「育休の種類」と「給付金の違い」を解説します。
育休と産後パパ育休の違い
まずは、よく混同されやすい「育休」と「産後パパ育休」の違いから見てみましょう。
用語 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
育児休業 (育休) | 原則、子が1歳になるまで | ・申請は1か月前 ・分割は2回まで |
出生時育児休業 (産後パパ育休) | 出生後8週間以内に最大4週間 | ・申請は2週間前 ・分割は2回まで |
基本的に「育休」という言葉は、産後パパ育休も含んだ表現として使われることが多いです。
つまり、「産後パパ育休は育休の一部(特例)」と認識されているわけです。
実際、産後パパ育休の対象期間(出生後8週間)にも育休は取得できるので、「育休で事足りるので、わざわざ産後パパ育休を活用しない」という方もいます。

産後パパ育休を使うメリットはないの?

分割回数が増えるのが、メリットの1つです。
「終わらない仕事の引継ぎ」や「想定以上に大変な育児」・・・。
一時的に仕事に戻ることで、仕事と育児の両立が可能です!
育児休業給付金・出生後休業給付金・出生時休業給付金の違い
次に、給付金の違いについて解説します。名称が非常に似ているため、混乱の元になりがちです。
大きく2種類の給付に分けて理解してください。
給付金の名称 | 主な対象期間 | 支給割合(手取り) | 備考 |
---|---|---|---|
育児休業給付金 | 出生後〜原則1歳まで | 180日間67%(80%) それ以降50%(60%) | 対象:育休取得者 |
出生時休業給付金 | 出生後8週間以内 | 原則67%(80%) | 対称:産後パパ育休の取得者 |
出生後休業給付金 | 出生後8週間以内 | +13%(最大100%) | ・上記給付と別要件有 ・上記給付に追加支給 ・支給日数最大28日間 |
「育児休業給付金」と「出生時休業給付金」は同じものと認識して問題ありません。
大事なのは、「原則67%支給のもの」と「+13%支給のもの」があり、受給要件が異なるということです。
どちらも受給することで、67%+13%=80%(手取り100%)の支給を得られます。

ちなみに、上手に育休を取得することで社会保険料が免除されるため、手取りベースでの取得率が増加します。
【Q&A】よくある誤解3選
令和に入り新しい制度が始まったことで、思い込みや誤った情報が広まっているように感じます。
「出生後休業支援給付金」に関して、特に多い3つの誤解をQ&A形式で紹介します。
「Q:産後パパ育休を取らないと給付金は満額もらえない?」→「A:いいえ」
名称はさておき、産後パパ育休を活用しないともらえない給付金はありません。
「育児休業給付金(育休取得)」の支給率の記載により、次のような誤解が生まれます。
【育児休業給付金の支給率】
育休開始~180日:67%支給
それ以降:50%

産後パパ育休を14日間、育休を180日間とった場合、
14日間+180日間 =194日間
194日間が67%支給されますか?

残念ながらそれは間違いです。
180日間は67%、14日間は50%です。
厚生労働省の資料には、産後パパ育休に関して
以下のような注意点が載っています。
支給された日数は、育児休業給付金の支給率67%の上限日数である180日に通算されます。
厚生労働省の資料より抜粋
出生後休業支援給付金(13%の追加支給金)の件も含めて、「産後パパ育休を取得した方が給付金が増える」というのは誤解です。
「Q:給付金は申請したらすぐもらえる?」→「A:いいえ。2か月前後かかります」
申請から実際の入金までは2か月前後かかるケースが多く見られます。
休業の申請は会社を通じて行い、ハローワークで審査が行われるので、時間がかかってしまいます。
育休開始直後に給付があるわけでないので、注意が必要です。
基本的には、3か月程度は無給でも困らないよう準備をしておきましょう!
「Q:令和7年4月1日前に出産の場合は100%にならない?」→「A:なる場合もあります。」
このような誤解が生まれるのは、出生後支援給付金(追加支給)が令和7年4月1日に始まった制度だからでしょう。
しかし、出産時期が令和7年4月1日前でも、手取り100%の給付になる可能性があります。
目安としては、令和7年2月下旬以降に出産(または出産予定)の場合です。
支給対象の詳細は文部科学省が出している資料をご覧ください。
誤解なく制度を理解して、損をしない選択を!
育児に関する制度は、名称や仕組みが似ていて混乱しやすいですが、「誤解」したままでは損をしてしまう可能性もあります。
この記事では、「出生後休業支援給付金(手取り100%となる給付金)」に関するよくある3つの誤解をご紹介しました。
- 「産後パパ育休を取らないともらえない」
→✕ 必須ではありません。通常の育休でも対象です。 - 「給付金はすぐ振り込まれる」
→✕ 申請から入金までは1〜2か月程度かかるのが一般的です。 - 「令和7年4月1日以前に出産した人は対象外」
→✕ 出生は関係なく、育休の取得開始日が基準です。
支援制度を正しく理解することで、家計の助けになるだけでなく、安心して育休を取得できる土台が整います。
「仕事を犠牲に・・・」「家庭を犠牲に・・・」と考えてはいませんか?
制度を上手に活用し、家庭と職場のどちらも大切にしていきましょう!